避難所運営【TKB48】を知る

消防団

災害が多いイタリアでは、災害発生から最初の48時間がとても重要視されています、
その間に最低限確保しなければならない避難所運営他、初動対応で優先される基本3つのインフラを【T(トイレ)・K(キッチン)・B(ベッド)】TKB48」と表現している。
発災後は避難所運営では「生活の質(QOL)」を維持することが、被災者の精神的・身体的な健康維持に直結する、という考え方が強いのです、そのため、避難所運営では「トイレ・キッチン・ベッド」を48時間以内に完備する「TKB48」が非常に重視されています。

TKBの意味

T = トイレ(Toilet)

  • 公衆衛生の維持のため、清潔な仮設トイレを迅速に設置。
  • トイレが整わないと、感染症のリスクが一気に高まる。
  • イタリアでは「バイオトイレ」や「簡易トイレ車両」などを避難所に導入している。

K = キッチン(Kitchen)

  • 避難所での食事提供体制を確立。
  • 災害発生から48時間以内に、温かい食事や水を提供する。
  • イタリアでは「野外炊事チーム(Field Kitchen)」や移動式キッチン車両を使って炊き出しを行うことが標準化されている。

B = ベッド(Bed)

  • 快適な睡眠スペースを確保することが重要。
  • イタリアでは、避難者一人ひとりにエアベッドやコット(簡易ベッド)、個別の寝具を提供するシステムが整っている。
  • 日本の避難所と違い、「床で寝る」文化はないため、必ず高さのあるベッドが配布されるのが特徴。

「48」の意味

  • 災害発生から「最初の48時間」(災害発生時、建物の下敷きになるなどの大怪我をした人間の生死を分けるターニングポイントは、「災害発生から72時間」)が生死を分けると言われている。
  • 特に避難所の生活環境を整えないと、「体調不良」や「衛生問題」が起こり、2次災害(感染症や持病悪化)に繋がると云われているので、48時間以内に「TKB」を最低限整えるのが基本。

イタリアの避難所を例に

  • 理論的背景には、避難所での劣悪な環境(不衛生、混雑、床で寝るなど)による“災害関連死”や健康悪化を防ぐ目標。
  • 「床で長時間寝る」と床近くのホコリ・ウイルス飛沫などの吸入リスクを増やすほか、静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群に類するもの)のリスクも指摘されています。仮設ベッドを使えばそのリスクを抑えられる、と言われている。
  • イタリアの優れた避難所対応例が、日本での“模範”としてしばしば引き合いに出されています。例えば、イタリアには国家的に「市民保護局(Protezione Civile)」という機関があり、資機材倉庫やトレーラー型ユニット(トイレ、キッチン、仮設住居ユニット等)を備えて、発災時に迅速に被災地に展開しているという事例が紹介されます。

管理と運営

  • イタリアの避難所は自治体と民間、ボランティア団体(Protezione Civile=市民保護局)が協力して運営する。
  • 国が大きく支援し、設備の基準が高い。

ベッド

  • 各避難所には、必ず「高さのあるベッド(エアベッドやキャンプ用ベッド)」が設置される。
  • 床に直接寝る文化がないため、床生活は衛生的にも精神的にもNG。
  • 「睡眠の質」が重視され、毛布や枕も個別配布。

トイレと衛生設備

  • 簡易トイレは清掃頻度も高く保たれている。
  • シャワー設備も併設されているケースが多く、清潔な環境が保たれる。
  • トイレ問題でストレスが溜まらないよう、男女別、バリアフリー化が進んでいる。

キッチン

  • 移動式キッチンカーで温かい食事が提供される。
  • 被災者の嗜好や宗教、健康状態にも配慮した食事メニューが用意されている。
    (ベジタリアンやグルテンフリーなど)

日本の避難所とイタリアの違い

項目 日本の避難所 イタリアの避難所
トイレ 和式が多い、簡易トイレ不足 清潔な仮設トイレが標準、シャワー併設
キッチン 食糧配布やパン、おにぎり 移動式キッチンカーで温かい料理
ベッド 床に布団・雑魚寝 エアベッドやコット(※1)を個別に提供
プライバシー 仕切りが少ない 個別テントやパーティションで区切る

※1コット:キャンプや車中泊などで使える簡易ベッド

日本国内の動き

  • 一部自治体や支援団体が、段ボールベッドや簡易トイレ、キッチンカー等を備蓄・展開する検討を始めている。
  • 避難所学会が「TKB48を常識に、避難所の二次健康被害ゼロを目指す」と打ち出していて、政策議論や防災訓練、啓発活動のテーマになっている。
  • 防災マニュアル等でも、避難生活における“衛生・食事・休息環境”の重要性を強調する文書が見られる。

課題・ハードル

  • 避難所の設営場所や建物構造、物資の輸送・配備、人的リソース確保などの制約
  • 財源や備蓄スペース、自治体間連携の仕組み整備
  • 災害の規模・被害の多様性(山間部、離島、豪雨や洪水地域など対応の難しさ)
  • 訓練・運営ノウハウおよび組織体制の整備

TKB48は「理想目標」であり、それを現実化するためには制度づくり、インフラ整備、資源配備、人的ネットワーク構築が必要という認識が広がっている事も事実。しかしながら

日本国内での導入事例(抜粋・ポイント)

  1. 長野県の「TKBスタンダード」等の標準化取り組み
    長野県などでは「避難所の環境は T(トイレ・シャワー)・K(キッチン)・B(ベッド)」として標準化を進め、イタリア事例を参考にした運用モデルを検討しています(資機材の備蓄・展開・運用方法を文書化)。

  2. 段ボールベッドの実務展開(能登半島地震などの事例)
    令和6年能登半島地震等で、段ボールベッドを短期間で展開して避難者の休息環境を改善した報告があり、実際の展開手順・課題(備蓄量不足、輸送・配置の作業負荷など)も共有されています。

  3. トイレ対策の自治体事例(熊本市など)
    熊本市はマンホールトイレの整備や仮設トイレ備蓄など、断水時でもトイレを確保する具体策を進めています。多くの自治体が携帯トイレ/トイレカー/マンホールトイレ等を組み合わせて準備しています。

  4. キッチンカー/キッチントレーラーの導入例(自治体補助事業採択事例)
    小型キッチントレーラーや移動販売車型のキッチンを導入し、普段は地域イベント等で利活用しながら非常時には温かい食事を提供する事例(兵庫県猪名川町などの採択事例)が報告されています。

  5. 国のガイドライン改定と行政の事例集化
    内閣府・関連省庁は能登半島地震等を踏まえて避難所ガイドラインやトイレ確保ガイドラインを改定・周知し、平時からの備え(段ボールベッド、トイレトレーラー、キッチンカー等)を強調しています。

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