投げる消火用具

自衛消防組織

2021年12月17日、大阪・北新地のビルでガソリンをまいた放火事件が発生した。被害者25人が死亡の大惨事となりました。先ずは、被害者様ならびにご家族や関係者様の皆様には心よりお悔やみ申し上げます。
過去の大惨事、お隣の国、2003年韓国テグの地下鉄でガソリン放火事件が発生して乗客など192人が死亡し148人が負傷する大惨事の記憶がございます。
日本では2021年8月6日には小田急線の車内で10人が重軽傷を負う無差別刺傷事件、10月31日には「小田急線の事件を参考」とした、京王線車内での無差別刺傷事件が発生しました、その時の負傷者は重軽傷を合わせて18人と、放火に及ぶ危険性もあり、東京メトロ様は異常時想定訓練として警察、消防が連携し実施している。訓練は「車内で不審者が刃物を振り回し、車内に放火する事象が発生」を想定し、訓練とは思えない本当に災害がこの場で発生しているかの如く実施された。
いつどこで何が起こるかわからない世の中となり、最近の放火の事件から、投げる消火具のご依頼を頂くことが多く、少しご案内をさせて頂きます。

消費者庁から注意喚起

“ボトル型やボール型の消火用具”根拠なしで措置命令 消費者庁

「火元に投げれば簡単に火事の初期消火ができる」とうたっていた商品について、消費者庁は「消火能力を裏付けるための適切な試験が行われていない」などとして、販売元の5社に対し、再発防止などを求める措置命令を出しました。

との事。水と比較しての消火能力をご案内するが良いと感じています。
又、あくまでも消火器の消火補助用具です。

5社の中には、日本消防検定協会の特定機器評価(NSマーク)を受け、生産後、個別鑑定を受け性能合格品が出荷されますので、消火能力普通火災五本で1単位は確かな品質と考えられます。

投げる消火器と消火器

消火器を投げて消すことはできません、消火器の器は鉄製が多くを占め、 ステンレス鋼製やアルミニウム製もございます、その容器には、消火薬剤とともに放射圧力源となる窒素ガス(N2)が蓄圧されており、常時0.7~0.98MPaで蓄圧されています。
投げると危険なのです、よって消火器は投げて使用するものではありません。
消火器は蓄圧に耐える鉄製他に消火剤が入り、その消火剤を放射するためのノズルがついています(業務用消火器)。家庭用消火器にはノズルが無い商品もございます。【消火器の家庭用(住宅用)と業務用の違いについてはこちら

投げる消火用具とは

呼称としては投げる消火具、投擲(とうてき)消火具、消火弾他がよろしいかと思います。
戦時中、鉄製の器に砂を入れ投擲して砂で消していた、その後、ガラス製小型の密閉容器に消火薬液をつめた手投げ式の消火器を消火弾と表称していました。
その後、ガラス製の消火具を台所の上部に装着し、火災発生の時にガラスに火が直接あたり消火剤が入るガラス内の温度が上昇し、内圧が上がりガラスが割れて消火剤が四散し消火する消火具、天ぷら油専用自動消火具として流通しました。
そのガラス製の消火具を火元に投げることで衝撃によりガラスが割れ、中の薬剤が火災による熱で消火ガスを発生させる消火システム、当時は消火器が高額であったため、このガラス製の消火具がよく流通しました。

ガラス製から樹脂製の器に変化

屋内使用の場合、ガラス製では割れた後に部屋中ガラスの破片だらけとなり、怪我をする2次災害もあります、そこでガラス製から樹脂に変わりました。
樹脂、皆様が喉を潤す水やお茶といった飲料入りペットボトルです、しかし樹脂、割れるボトルを作る発想は、ペットボトル製造会社にはそのような概念はありません、ペットボトル製造会社は飲料入りペットボトルを落としても割れない、さらに薄くして軽くて丈夫なペットボトルを製造する事が本来の製造会社の考えです、そこに割れやすいペットボトルを作る発想の依頼は製造会社も困った事でしょう。しかし、よくコンビニ他においているカラーボール、これはカラー塗料が入っていて防犯上、犯人が逃避した時にそのカラーボールを投げつけて塗料を犯人に付着させて犯人を特定する、そのカラーボールは割れやすく衝撃で割れないとダメなのです。
そのカラーボールの割れやすいペットボトル原料の開発によりカラー塗料ではなく、消火剤を入れて投げる消火具ができたのです。
このペットボトルは燃えにくい原料を使用し、火災の中に投げ入れても自己消火能力があるのです。

消火能力が知りたい

消火能力、難しい言葉です。消火器には消火能力単位があり、一般的な普通火災、油火災、電気火災と大きく区別されます(消火器をもう少し知りたいはこちら)、投げる消火具は普通火災が一般的です、油火災に適用するか否かは各社で違います。

油火災に注意点!
天ぷら油火災などには投げて消火行為をしないでください、投げた時に鍋がひっくり返り他の箇所が火災になったり、大火傷の原因となります。
消火器の普通火災や油火災は消火単位を測定する模型があり、その模型を消火すると合格となり消火単位が与えられます。
消火器の補助用具として投げる消火具の消火能力を測ることは難しいのです。
しかし、各社はいずれかと比較し、「消える能力はどの位ありますか」の質問になんとか答えたいと思い回答を導き出したのは、水との比較です。
普通火災の場合に限り比較する事ができると思ったのです、それは消火バケツと比較して、水との消火能力の違いを比較する事ができるわけです。
消防法では、水バケツ3杯
(水バケツ1杯8リットル✖️3杯=24リットル)
で模型の火を消火する事ができると定めています。
その模型(右の井桁型の模型)を投げる消火具で何本で消せるのか、投げる本数により使用した消火剤の量が測定されます、その消火に使用した消火剤の量と水24リットルと比較して水との違いをご案内すればいいのです。
※油火災は模型を使用して検証できません。

各社が製造する投げる消火具

投げ消すサット119

FIRESAVE

ラクシー

小さな消防士

代表的な投げる消火具です、他にもホームセンターで販売している、【ファイテック】や【消える魔球】他、火災発生時に自動(火薬が内蔵されている)で消火するボール型の商材等、投げる消火用具は多く販売されています。
割れやすいペットボトルさえあれば、消火剤ではなくても水を入れて子供たちが投げて消す、といった事も消火方法の一つでは無いでしょうか。
他には、簡単なビニール袋に水を入れて、投げて破れて四散する事で消火する、といった商品もございます。

消火剤の成分はアンモニア系を使用した商品が主流で、万が一落として割れた場合は、アンモニア臭がしますので、使用しない場合は割れない様にご注意願います。

投げる消火具と消火器との違い

ほんのこの10年の間に、投げる消火具が多く開発されました。
いざと言うときに、消火器が使えないが投げる行為はできる投げる消火具、消火器の補助用具として消火器とは別に備える事もいいのでは無いでしょうか。

投げる消火具と消火器との大きな違い

1、消火器は避難路を確保して消火活動をする
👉(火元が無い場所を探して、いつでも逃げれるように、背中に避難路を確保する
2、投げる消火具は、避難路を作る
👉(火災に覆われた時、避難路が見つけられない時火元に投げて避難路を確保し、火の勢いが小さくなった所を速やかに避難、避難路を確保できる可能性が残される
消火器も投げる消火具も、万能ではありません、初期消火用具です。
初期消火とは、天井に炎が届くまでの数分間です、初期消火を越えれば、速やかに避難をしてください、避難の時に煙に注意してください
(火災でこわい煙を知る
こちら
想定外の事故、万が一の時に最悪な事態を招かぬ様に是非、備えてください。

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